やまびこテラス前景「天空の地」

やまびこテラス・ウッドデッキ

15日(金)、内堀雅雄福島県知事が‘やまびこテラス‘(石川町中田字山田)を訪問した。

ここは有限会社仲田種苗園(仲田茂司社長)の創業の地。同園では里山植物を独自の特許技術でマット状に仕上げた野の花マットを開発して、首都圏の屋上緑化などに提供している。

また仲田が主宰するNPO法人ふくしま風景塾は、県サポート事業チャレンジ枠と石川町の支援を受けて、‘やまびこテラス‘で都市住民が里山を楽しみ、滞在するための新しいビジネスを展開している。このプロジェクトには、千葉大と古殿町のNPO法人馬事振興会、地域住民が連携している。

これまでに、‘やまびこテラス‘を象徴するウッドデッキ、里山散策路、シードバンク‘妖精の森‘、里山園芸民泊、馬場・馬小屋の整備などを行った。

内堀知事は県庁から往復4時間をとんぼ返りして訪問の30分を捻出。車から降りるなり、「気持ちの良い環境整備ですね」とテンションが高かった。「ここまで来る途中、集落、水田、山林の風景が微妙に変化してとても美しかったです」。この一言は、里山の価値を表すもので、ここを訪問するのが楽しみだったという知事の期待を仲田は知ることができた。

種苗園と風景塾は両輪となって、里山と都市を循環させるソーシャルビジネスを目指している。種苗園が里山の風情を都市に再現していることで第3回ふくしま産業賞銀賞(2017年)、風景塾が里山再生活動で同第4回特別賞(2018年)を受賞していること知ると、同賞表彰式の主賓として毎回出席している内堀知事は、「そうか受賞は2団体だが根っこは同じ、この里山なんだ」と大喜び。

    内堀知事は野の花マットを手に、「優しい雰囲気が素敵ですね」。

仲田が「福島県は南系と北系、しかも太平洋側と日本海側の植生がクロスしているので、日本で一番植物の種類が多く、私たちはその植物資源を活かしてビジネスを展開している」と説明すると、知事は「暖流と寒流が交差する潮目ということは知っていたが、植物もそうだったとは初めて知った」と驚く。

           内堀知事と仲田茂司(仲田種苗園・ふくしま風景塾代表)

‘やまびこテラス‘の馬場・馬小屋は、里山散策や里山園芸民泊に宿泊する人々が馬と触れ合う機会を作るために整備した。当日は馬事振興会の協力で馬1頭に種苗園の女子社員たちが乗馬。知事はその和やかな情景に引き込まれながら、「本当に癒されますね。ホースセラピーというのは今注目されています」。

   乗馬するマリア博士と種苗園女子社員

当日は、このプロジェクトに2015年から毎年参加している、ロシア出身で千葉大学のマリア博士も駆け付けた。2015年に参加した留学生7人はfukushiam7。とても不安だったが、石川町のコメ全袋検査を見学したり、地元食材の郷土料理を食べて、不安が一掃された結果、SNSや口コミで広がり、次年度からは希望者が殺到して、人数制限する状況がコロナ禍まで続いた。2015年から2019年までに、11ヶ国延120人が参加した。

   内堀知事との懇談

知事に留学生の間でこの里山が人気の理由を尋ねられたマリア博士は「本当の日本を体験できるからです」。知事は感激して、「里山の魅力をぜひ世界中に広めてください」。また「種苗園と風景塾はふくしま産業賞受賞などの実績があるが、さらに野の花マットは地球環境問題に貢献する可能性がある」という知事の期待に対して、仲田は「プロジェクトに参加したり私が大学内で指導した留学生の多くが母国の在来種を使った緑化を希望している。彼らにやまびこテラスで技術訓練するなどして、福島発里山技術を広めたい」と応え、おおいに盛り上がった。

   内堀知事(左)と仲田茂司

知事は「ずっとここにいたい気持ちですが、午後からはまた県庁で公務があります」と残り惜しそうに帰路についた。

(最初の2枚を除く写真撮影:全日本写真連盟須賀川支部 根本忠)