福島県太平洋側は、大陸プレートに海洋プレートが沈み込むところである。
沈み込む際の圧力によって、地下40キロメートルで海洋プレートの表層が変成する。
福島県石川郡からいわき市西部にかけては、広域に変成した御斉所変成岩とその西の竹貫変成岩が地質学的に重要である。
御斉所変成岩は約2億年前のジュラ紀、竹貫変成岩はそれ以前とされている。
さらに6500万年前に花崗岩が広域的に貫入して、それと接触した竹貫変成岩が熱によりさらに変成した。

鮫川(さめがわ)は、福島県東白川郡鮫川村松曾根山を水源とし、いわき市錦町で太平洋に注ぐ二級河川で、総延長65キロメートル。

鮫川は花崗岩帯から、途中御斉所変成岩を挟み、竹貫変成岩帯を貫いている。
これを河川風景でみると、上流から下流に向かって、花崗岩の白から、角閃岩・緑泥片岩(鮫川石として庭石として名高い)の青へと変化していく。

■鮫川源流域:鮫川村強滝(こわたき)
N 37°03`53.60″
E140°30`40.91″
花崗閃緑岩の岩体を河川が浸食している。
方状節理によって、剥がれた角張った石が組み合って、滝を作っている。
植生は、照葉樹林帯のケヤキ・イロハモミジ群集の高度限界の様相。

川原石をみると花崗閃緑岩が主体だが、一部に上流から運ばれてきた砂岩が見られる。

■鮫川中流域:古殿町薄木
N 37°03`12.38″
E140°36`36.63″
鮫川はU字状谷を流れる。川を構成する花崗閃緑岩は、川の両側の山や上流から転石したものが多く、角が取れている。川原には上流の竹貫変成岩帯から運ばれてきた黒雲母片麻岩がごくわずかに見られる。

■鮫川上流の支流:古殿町馬入田
N 37°03`51.73″
E140°34`23.94″
花崗岩帯の河川風景を比較するために、途中の竹貫変成岩帯を飛ばしてきたので、ここで上流に遡る。
竹貫変成岩は、黒雲母片麻岩が主体。

黒雲片麻岩は、黒い泥と白い砂が互層となるのが特徴。大陸から供給される泥や砂が海底で堆積して、海洋プレートに乗りながら、大陸プレートの下に沈み込んで変成した。

さらに花崗岩貫入時の熱により、砂に含まれる長石がレンズ状になるのが特徴。

■鮫川中流域:古殿町東北電力鮫川発電所(古殿町といわき市の境)
N 37°02`09.27″
E140°37`21.60″

花崗閃緑岩80% 角閃岩20%。このあたりから角閃岩が混じる。

■鮫川中流域:いわき市石住
N 37°01`35.65″
E140°39`03.11″

御斉所変成岩の角閃岩岩体を鮫川が浸食する。
青みがかった角閃岩は「鮫川石」として庭石のブランド品。
河川風景は、見事な青の世界。

川原石:角閃岩80%、花崗閃緑岩10%、黒雲母片麻岩10%


■鮫川下流域:いわき市龍神峡
N 36°59`03.22″
E140°43`51.97″

御斉所変成岩の緑色片岩の岩体を鮫川が浸食している。
緑色片岩も角閃岩と同じ海底火山灰を起源としているが、角閃岩よりも変成度合が低い。
緑色片岩も角閃岩と同じく、庭石の鮫川石として扱われる。


川原石は、上流から運ばれてきた角閃岩80%、花崗閃緑岩10%、黒雲母片麻岩10%