モミジの見分け方
ヤマモミジほど、誤解されている樹木はありません。真正のヤマモミジを知る人はプロでも意外と少なく、ある人はイロハモミジ、ある人はオオモミジをイメージしています。ここでは、イロハモミジ Acer palmatum、ヤマモミジ Acer palmatum var.matsumurae、オオモミジ Acer palmatum var.amoenumの見分け方について解説しましょう。分布を見ると、イロハモミジとオオモミジは太平洋側、ヤマモミジは日本海側に自生します。イロハモミジは照葉樹林帯に属しますが、分布の北限である福島県の場合、標高500mを境として、低いところではイロハモミジ、高いところではオオモミジが自生します。葉形を見ると、イロハモミジとヤマモミジは外周のギザギザが二重の「重鋸葉」と共通していて、ギザギザが一重の「単鋸歯」のオオモミジとは異なります。
識別のポイントは実の形と付き方です。
イロハモミジの実は一番小さく、翼状の実(翼果)は竹とんぼのように、水平に開きます。また葉の上からかぶさるように実をつけるのが、ヤマモミジやオオモミジと区別する大きなポイントです。ヤマモミジとオオモミジは、翼果はブーメラン形かU字状となり、実は葉の下からぶら下がるように付く点がイロハモミジと異なります。オオモミジはヤマモミジよりも翼果が大きく、またU字状を呈するものが多いという傾向があります。
枝先から見分ける
赤い枝先:イロハモミジ
黄緑の枝先:オオモミジ
イロハモミジの紅葉は、極端な日陰でない限り赤く発色しますが、ヤマモミジとオオモミジは黄葉、紅葉、そして源平(黄、赤、緑)と個体差が大きいのが特徴です。
ヤマモミジはイロハモミジと葉形こそ似ていますが、翼果の付き方、枝先、紅葉の出方など木の性質に関わるところではオオモミジと共通します。太平洋側の造園設計においては「ヤマモミジ」ではなく、オオモミジと指定されたほうが混乱はなくなるし、植生的にはあっていると思います。