ブータン花博2016は、パロで開催した。
私たちは、日本チームとして出展。
私は、パロゾンを借景に取れるヤナギの大木下を選んだ。
ブータン農林省幹部は「もっと良い場所を提供できるのに」と不安げ。借景という考えは日本独特。ちょうど雨季に入り、柳の枝で屋根を目立たないようにした。借景と柳を活用したNATUREは王族たちに絶賛されて、農林省幹部も面目躍如。ワンチュク国王も喜び握手した。
施工は仲田種苗園の岡部公一工事部長が現地スタッフを指導した。
活景:その土地の景色を活かし、ポイントに手を加えることで、土地の魅力をアップする。私たちがブータンで実践し、日本の地方でも応用ができるランドスケープの思想と手法。
2016年9月、私たちはブータン首都郊外にある王立造園園芸センター敷地内で、同国初の日本式庭園三春ガーデンを造園した。
ブータン側からは、メインガーデンとして敷地中央を提案された。しかし私は、西端にある小川に目を付けた。
まず南北の2山を借景とした。次に繁っていた外来樹木のニセアカシアを伐採。
重機は一台、しかもオペレーターは石組は初めて。仲田種苗園の岡部工事部長の指揮で右往左往しながら、滝石組みに取り組んだ。
流れは人力で石を掘り起こし、ポイントでは石を上から落として、小滝や瀬を作った。これがなんとも良い。
雨季でずぶ濡れになり、なおかつ川に入って奮闘したブータンスタッフたちのお陰で、僅か実働1週間で5000平米の池泉回遊式庭園が完成した。
2017年3月、私はチベット仏教の聖地タクツァン僧院標高3120mに登った。
3ヶ月後には、在インド日本大使館の依頼で、ブータン花博2017に日本庭園を作庭することが決まっており、そのイメージを探しての巡礼だった。
ヒマラヤ山脈は上部が中世代に存在したテチス海の堆積層、そのしたが変成岩(片麻岩を含む)となっている。
タクツァンは、ガーネット(柘榴石)を含む片麻岩。
植生は、乾燥に強く風にも耐えるウバメガシとマツ。
2017年3月、私はJICA事業でブータン首都ティンプーに滞在していたが、3ヶ月後にブータン花博2017に出展する日本庭園で頭がいっぱいだった。
移動中の車窓から川を見ていると、白い石が目に止まった。車を止めてもらって近づくと、青い石もある。私は伊勢神宮の青石と白石を思い出し、庭に使うことにした。花博の主賓である眞子さまの皇室と伊勢神宮は関係が深いことも何かの導きであろう。
ヒマラヤ山脈の上部は中世代のテチス海の堆積層で石灰岩ライムストーンも含まれており、河原の白い石はその転石。またテチスの堆積層の下は変成岩で青い石はその転石。
盆栽のように趣きがあるマツも岩盤に自生しており、ブータンスタッフに根回しと根巻きを教えて、3ヶ月後の本番に準備した。
私は一旦日本に帰り、花博の作庭はわずか10日。ブータンスタッフの事前の協力と依頼主の在インド日本大使館の全面的支援がなければ、絶対に実現しなかった。
2017年6月4日のブータン花博、私は在インド日本大使館から依頼されて日本庭園を作庭、国賓である秋篠宮長女の眞子さまをご案内した。
枯山水式庭園。滝石組みの主石は霊峰タクツァン、流れはパロ川を青石、無限のインド洋を白い石灰岩ライムストーンで表した。
眞子さまやブータン王族の皆さまには大変喜んでいただいた。ワンチュク国王には、作庭中とご案内中、2016年の花博を含めると3度も握手していただき、たくさんの贈り物をいただいた。
またインドのランドスケープアーキテクト達がとても褒めてくれて、インド政府要人が来るたびに紹介してくれたが、英語が不得手な私は充分応えられなかったのが、残念。