東北地方を南北に縦断する奥羽脊梁山脈は、大陸プレートに海洋プレートが沈み込む所にあり、約300万年前に両プレートの圧力によって褶曲が発生して、凸部は山脈、凹部は内陸盆地列となり、凸部と凹部の境には「逆断層」が生じた。この褶曲活動は現在まで続いていて、約1,000m隆起した(「ふくしま5億年の自然史」福島県立博物館)。

 

この褶曲隆起に併行して活動した火山が大規模カルデラを作りつつ高度をさらに増した(Wikipedia「奥羽山脈」)。二酸化ケイ素SiO2を多く含む流紋岩やデイサイトの溶岩は粘性がつよく、一気に爆発して大規模なカルデラを作る。

140万年前~100万年前、小野カルデラ、塔のへつりカルデラ、成岡カルデラ、天栄カルデラという4つの南会津の火山が大規模に爆発して、福島県中通り地方から栃木県北部の広範囲に火砕流に覆われて堆積した。「白河火砕流群(白河層)」と呼ばれている。


火砕流堆積物が高温のまま厚く堆積すると自身の熱で変形して溶結することがあり、そのようなものは溶結凝灰岩と呼ばれる(Wikipedia「火砕流」)。

火山砕屑(さいせつ)岩はきわめて多様な火山放出物の集合体であるのが普通であるが、おおよそ50%以上を占めている主要岩片の性状と大きさによって次のように分類される。特定の形態、内部構造を有しないものとしては径32ミリメートル以上の火山岩塊、火山灰よりなる火山角礫(かくれき)岩や凝灰(ぎょうかい)角礫岩、径32以下2ミリメートル以上の火山礫よりなる火山礫凝灰岩、径2ミリメートル以下の火山灰よりなる凝灰岩に分類される。(木)日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
火山砕屑岩(木))。

白河層の火山灰凝灰岩は、加工しやすいために、平安時代からの石造物に利用された。

「右志者為源裕光・建治元年(1275年)」銘の板碑 石川町曲木字坂下

 「和久石造供養塔」(12~14世紀 石川町)

6月5日、私たちは地質学が専門の蟹澤聡史東北大学名誉教授を招聘して、東北のミケランジェロと称せられる小松寅吉とその弟子小林和平の代表的な狛犬を帯磁率計を使って調査し、また2人の石材採掘地の見通しを立てた。詳細は蟹澤先生によってまとめていただくが、磁鉄鉱を多く含む凝灰岩は狛犬などの石造物に利用され、逆に磁鉄鉱の比率が少なく石英を含む凝灰岩は固く細やかな細工ができないので墓石などに利用されたようだ。

小松寅吉、中島村川田神社
小松寅吉、白河市下野出島鹿嶋神社、白河市指定文化財
小林和平、棚倉町一色鐘鋳神社
小林和平、古殿八幡神社、古殿町指定文化財

小林和平、石都々古和気神社、石川町指定文化財