アクアマリンふくしまの開館10周年記念事業として、こども体験館「アクアマリンえっぐ」が建設されました。「えっぐの森」はその外庭であり、面積は約2,000㎡です。
えっぐの森の発注者は(財)ふくしま海洋科学館(安部義孝理事長)、設計監修が同館環境展示課(安田純課長)、設計施工は仲田種苗園が担当して、2010年7月16日に竣工しました。
Green Age 2010/8(日本緑化センター) 仲田茂司『在来種植物を使った様々な緑化』から抜粋しながら、紹介します。
えっぐの森のコンセプトは、2E=Eco+Enjoy。沿岸部から里山の生物多様性を実現しつつ、山菜など食べる楽しみを子供たちに知ってもらいたい。
このプロジェクトの前に、仲田種苗園は2006年から2008年にかけて、宮城県から神奈川県の沿岸部の植生調査を実施しました(仲田種苗園hp 環境戦略 「環太平洋環境戦略」)
次の写真は、いわき市小浜港です。坂道を挟んで右側(港側)の植生は、スダジイ、タブノキを指標とする海岸性照葉樹林です。ところが道路を隔てた左側(山側)の植生は一変して、カシ類、シロダモ、ヒサカキ、アセビなどの常緑樹、アオダモ、リョウブ、ネジキ、ヤマツツジなどの落葉樹から構成される内陸性の2次林となります。
すなわち、照葉樹林によってわずか幅数メートルの緑の壁ができるならば、沿岸部においても里山植物群の導入が可能であることを示しています。


えっぐの森では、カイズカイブキによって緑の壁を作りました。さらに敷地港湾側の西3分の1(「海エリア」)については海岸性の照葉樹林と草本の海浜植物。本館側の東3分の2(「里山エリア」)については里山の雑木と山野草を植栽しました。

海エリアの高木は、強い潮風に耐えるために、単独ではなく、地域性を配慮したスダジイ、タブノキ、モチノキ、エノキ、ネムノキの5種の寄せ植えとし、「鎮守の森ユニット」と名付けました。

沿岸部の地質である泥と砂の互層は樹木の成長に長期間を必要とすることから、植栽穴に黒色土に牛糞を混ぜて使用しました。現在は黒色土に燻炭を1割程度混ぜています。




鎮守の森ユニットは施工後10年以上経過しても、樹勢は順調で、植栽時に高さ5mだったネムノキやスダジイ、タブノキ、エノキは高さ7~8mまでに成長して、立派な緑陰を形成しています。植栽時に高さ3mだったモチノキも高さ5mに成長して、中木層を形成しています。当初計画したように、5種の樹木がスクラムを組んで潮風に耐えていることと、植栽穴(植枡)面積が単独植栽よりも3~5倍ほど広いので根が十分に張れる利点があります。













海と面する境界線近くには、潮風に強いノブドウやスイカズラなどのツル植物を使ったベイ・クライマーズ・フェンスを設置しました。


ベイ・クライマーズ・フェンスの内側、潮風が避けられる場所に、2010年にキノコ小屋を設置しました。幹周60cmのコナラを使って、シイタケなどを植菌したが、なかなか菌が回らず失敗。
と思いきや、5年後の2015年秋にシイタケが出てきました。


レインガーデン 施工時に雨の流れ筋の場所に暗渠を設置して、その敷地内終点に防水シートを貼り池を作った簡単なレインガーデン 野の花マットのミソハギバージョンが適材適所。水質も保たれています。
