訳文は、esdiscover.jpから抜粋した。

山部赤人の歌4首

1424春の野にすみれ摘みにと来し我れぞ野をなつかしみ一夜寝にける(春の野ですみれを摘もうと私はやってきたが、野にすっかり心惹かれて一夜野宿してしまったよ)

1425あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいたく恋ひめやも(山桜の花が毎日こんなに美しく咲くんだったら、こんなにひどく恋しく思うだろうか)

1426我が背子に見せむと思ひし梅の花それとも見えず雪の降れれば(あなたに見せようと思っていた梅の花は、いずれもそれとも見分けられない、雪が降ったので)

1427明日よりは春菜摘まむと標めし野に昨日も今日も雪は降りつつ(明日から春菜を摘もうと標した野に、昨日も今日も雪が降り続いている)

山部赤人

1471恋しけば形見にせむと我がやどに植ゑし藤波今咲きにけり(恋しかったら形見にしようと私の庭に植えた藤の花が、今咲いたことである)。

大友清縄

1482皆人の待ちし卯の花散りぬとも鳴く霍公鳥我れ忘れめや(みんなが待っていた卯の花が散ってしまったとしても、卯の花に鳴くホトトギスのことを私は忘れようか)

大友坂上朗女

1500夏の野の茂みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものぞ(夏の野の繁みに咲いている姫百合のように、相手に知ってもらえない恋は苦しいものです)

山上憶良

1537秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花(秋の野に咲く花を指折り数えてみると七種(ななくさ)の花がある)

1538萩の花尾花葛花なでしこの花をみなへしまた藤袴朝顔の花(萩の花、尾花葛花、なでしこの花、をみなへし、また藤袴、朝顔の花)ハギ、ススキ・クズ、カワラナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、アサガオ

額田王

16冬こもり 春さり来れば 鳴かずありし 鳥も来鳴きぬ 咲かずありし 花も咲けれど 山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉をば 取りてぞ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く そこし恨めし 秋山そ吾は(冬が去り、春がやってくれば、鳴かずにいた鳥もやって来て鳴く。咲かずにいた花も咲きます。ですが、山が繁り、分け入っていくことが出来ず、草が深いので折り取って観賞することもできません。秋山は木の葉を観賞し、黄葉を手折って観賞することも出来ます。青葉が残り少なくて残念ですが、でも、私は秋山がいいですね)

忌部首黒麻呂

1647梅の花枝にか散ると見るまでに風に乱れて雪ぞ降り来る(梅の花びらがまるで枝から離れて舞い散っているかのように、雪が風に吹かれて舞い降りてくる)

大友家持

1649今日降りし雪に競ひて我が宿の冬木の梅は花咲きにけり(きょう降った雪に競うように我が家の庭の冬木の梅が早々と咲いたよ)