ル・コルビュジェ「輝く都市」(1935年)

「自然と人間は、統一と協調を保っているものであって、自然の外に拵えものの社会があるわけではない」(デカルト)

toshi-1.jpgtoshi-3.jpg都心を癒す「野の花マット」(東京大崎・シンクパーク)。

20世紀最高の建築家とされるル・コルビュジェは、人間と自然の関係を深く思索した思想家でもあった。

「時代が問題に与えるべき解答を判断する基準は一つしかない。それは、人間的ということである」                                                           「努力すべきことは、人間とその環境の間の均衡を保つことである」                            「環境とは、その永遠に変わらざる本質において新しく見直された環境のこと、すなわち、それは自然にほかならない」

toshi-4.jpgtoshi-2.jpg都心に深呼吸させる「野の花マット」(東京大崎、シンクパーク)

ル・コルビュジェが「輝く都市」を著した1930年代は、欧米の都市化が進む一方で、人間疎外が深刻となっていた。

人間性を回復させるためには、太陽、空間、緑という「自然条件」を都市の中に復活させる必要がある。そのためには、高層建築を広い間隔を置いて建てて、広い緑地を確保する必要があると、コルビュジェは主張する。

これは「輝く都市」より2年遡る1933年、コルビュジェが中心となって活動したCIAM(現代建築の国際会議)のアテネ憲章を踏襲・発展させたものである。

コルビュジェは、高層建築を建てることによって、緑地の確保、職住近接、レクレーション・教養施設の近接、などの効果があると主張する。

これらの居住者の便益性は、エベネザー・ハワード「明日の田園都市」(1902年)の中で展開されているものであるが、コルビュジェは平面的な田園都市構想は広大な土地と膨大な経費を必要とする点で、非現実的であると断じる。

 toshin-6.jpgtoshin-5.jpg都心を彩る「野の花マット」(東京大崎・シンクパーク)

さてコルビュジェは、「(平屋根に)庭園を拵えるならば、コンクリートや鉄の膨張という非常に恐ろしい結果を未然に防止することになるであろう」と、屋上庭園の将来性を先見している。

「輝く都市」とは、人間性を回復させるために「太陽」「空間」「緑」が確保された都市であり、高層建築を建てる目的もそこにある。そしてここで言う「緑」とは「自然」である。                                                                           高層ビルが林立して、自然が失われている東京やニューヨークなど現代巨大都市の状況は、コルビュジェの理想とは正反対のものである。